カシミヤガウンとほのかなあかりに包まれる至福

くつろぎの時間を科学する

カシミヤガウンとほのかなあかりに包まれる至福

2017/01/26

お気に入りの写真集を開く静かな夜のひととき。
眠る前の時間は、日中の喧噪や出来事を一旦忘れてリセットするようなつもりで過ごしたいものです。
そんなときに欠かせないのがやさしいあかりの演出。ここでは、照明のプロに聞くくつろぎの照明テクニックを紹介します。

光とメラトニンの関係

間接照明が主流の欧米に比べ、日本の家庭では隅々まで明るく照らされる蛍光灯による全体照明がいまだに好まれています。なぜなら、日中の明るさを再現する照明ではリラックスできないことがあまり知られていないからかもしれません。
また、日本人の5人に1人が睡眠障害に悩まされているといわれるほどで、眠りへの関心がますます高まっています。そこで、快適な睡眠のための照明環境をテーマにさまざまな研究を続けてきた野口公喜さんに、光が人間の健康の原点である睡眠と密接なかかわりがある点についてお話をうかがいました。
メラトニンというホルモンは、夜間に集中的に分泌されるため、睡眠ホルモンともいわれています。以前から、このメラトニンの分泌量が光を受ける量や色温度によって変化することがわかっていて、世界中で研究されてきました。結論から言うと、メラトニンが分泌されやすいのは照度と色温度が低く設定された照明環境なのです。つまり、眠る前のリラックススペースには同様の設定が望ましいということです。
特に、日中は昼白色から昼光色といった比較的高めの色温度、夜は電球色などの色温度の低い光源を使用すると快眠のために効果があります。覚醒中である日中は太陽の光を含む高照度の光を浴びることで夜間のメラトニン分泌量が増えるという報告もあるため、日中はできるだけ積極的に色温度の高い光を浴びたいもの。一番気をつけたいのは夕食後から就寝までの時間帯にどのような照明環境に身を置くかということです。質の高い睡眠を得るためには、必要以上に明るい空間で過ごさないことを意識しなくてはなりません。読書などで明るくしたいときも部屋全体を明るくするのではなく、小型のスタンドを使用するなどの工夫が必要です。間接照明は、雰囲気づくりの効果とともに、眠りに入るための準備の意味もあるわけです。そして、就寝直前となる寝室ではワット数の小さい白熱灯もしくは電球色の蛍光灯やLEDを使用し、30lx(ルクス)程度まで照度をおさえます。また、就寝中は薄明かりくらいに留めて視野内に光源を置かないことも心得ておきましょう。
このように、切っても切れない深い関係がある睡眠と光。照明環境を整えることで無理せず自然に眠りにつき、心地良く目覚められるような健康的な暮らしを始めてみてはどうでしょう。

唾液中メラトニン濃度
低照度照明によるメラトニンの抑制を調べた結果。日勤のオフィスワーカー(男性13人)を対象として、20時~24時まで顔面照度100lx(色温度5000K)の光曝露を行った際のメラトニン分泌量を計測。結果、メラトニン分泌が確認された群(全体の半数以上)において、その顕著な抑制が確認された。(2007年)

唾液中メラトニン増加量
照明の色温度とメラトニン分泌の関係。12人の健常者に対し、深夜1時30分~2時30分までの1時間、色温度の違う照明を顔面照度200lxの曝露を行ったところ、5000K条件でメラトニン分泌の抑制が顕著に表れた。低色温度照明ではメラトニンの抑制作用が低くなる傾向が見られる。(2008年九州大学との共同研究結果)



野口 公喜(のぐち ひろき)
工学博士。照明学会正会員。パナソニック電工株式会社 照明綜合技術センター技師。九州芸術工科大学大学院卒業後松下電工入社。以後、照明綜合技術センターにて照明の生理応用に関する研究に従事。

※掲載内容は『TOUCHが考えるちょっと知的なバスタイム』発行当時(2011年)のまま掲載しております。



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