ふんわりマシュマロのような肌触りと音楽に癒されて

くつろぎの時間を科学する

ふんわりマシュマロのような肌触りと音楽に癒されて

2017/02/02

さまざまなストレスを抱えている現代人にとって、 音楽は体と心のバランスを整えてくれる大切な耳の栄養です。
心地良い音楽を聴くとリラックスできるのはどうしてなのか?
音楽療法にも取り入れられているそのメカニズムを知ることが、くつろぎの時間をより充実させるためのヒントになるはずです。

眠る前に聴きたいやすらぎの音楽

耳から入ってくる情報は脳神経系をダイレクトに刺激して、心のあり方に影響を及ぼします。たとえば自然界で感じる波音のような心地良い音は人を気持ち良くさせ、騒音などの不快な音は人をイラつかせて、感性に直接作用するもの。そこで、音と音を組み合わせた音楽が生み出す物理的な特性を活用して体と心のバランスを整えて健康へ導く音楽療法を研究する和合治久教授から、快眠のための音楽についてお聞きしました。
 音楽はリズム、メロディ、音の高低、周波数、ゆらぎ(※1)、倍音(※2)など、さまざまな要素の組み合わせで成り立っています。人間が聴くことのできる音域は、20ヘルツから2万ヘルツと考えられていて、4000ヘルツ前後の高い周波数の音をたくさん含む音楽を聴くと、副交感神経にスイッチが入りやすく、心拍や血圧が安定することがわかっています。また、自然界にあるゆらぎを含むこともリラックスできる音楽のポイント。木管楽器や弦楽器が奏でるビブラートは川のせせらぎ音のようなゆらぎが多く含まれることから心地良く感じます。特にバイオリンやフルートはその筆頭。高周波の音に加え、倍音効果で美しくつやのある音色にはリラックス効果が期待できます。
 一般的にくつろいでいるときにα波が出やすいのは、静かでゆったりした曲調、歌詞が含まれていない短いフレーズのリピートが多いシンプルな曲といわれています。比較的クラシックに多いこうした音楽を聴くことで、まず副交感神経が優位になってアセチルコリンという神経伝達物質が分泌されると呼吸や心拍が緩やかになり、同時に脳内セロトニンから睡眠物質メラトニンが生成されて脳が休息できる状態に。つまり、体も脳もリラックスして快眠につながるというわけです。
 ストレス社会に身を置き、視覚を酷使してさまざまな情報を得ている私たち現代人。だからこそ、1日の終わりにはその目を閉じて耳を澄ませてみてください。気分や精神状態に合わせて曲をセレクトできるようになれば理想的ですが、まずは心が穏やかになる自分好みの1曲を見つけて快眠のための準備を整えましょう。

(※1) 物理的な「1/fゆらぎ」のこと。たとえばそよ風のように強い風と弱い風が一定のリズムをもって規則的に吹いている様子。これは人間の脈拍や心拍にもみられ、緩やかな規則性のあるリズムを指します。

(※2) 音楽の速度が速い場合、音と音が空気中でぶつかり合い、より高い音が生じる現象。

和合 治久(わごう はるひさ)
埼玉医科大学保健医療学部教授・学科長。国際統合医学会顧問、日本臨床音楽研究会理事。専門分野は比較免疫生物学、免疫音楽医療学などで、人間と動物の免疫と健康維持の関係を解析している。共著に『21世紀の音楽療法を考える』(くおん出版刊)など多数。

Music selection for sleep

とめどない想い|STRONG EMOTIONS

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クラシックギターだけの音色とは思えない音の広さと深さが、心の奥底に響き、安らぎを感じるアルバム。親しみやすい曲が豊富。

トリプルハープの調べとともに、イタリアバロックの『語り歌』を

トリプルハープの調べとともに、イタリアバロックの『語り歌』を
ソプラノふたりの澄みきったコーラスの美しさとトリプルハープ(古楽器)の流れるような幻想的な音色が心を穏やかにさせます。

メンデルスゾーン 弦楽のための交響曲

メンデルスゾーン 弦楽のための交響曲
メンデルスゾーンが少年時代に練習曲として書いた交響曲。弦楽合奏の強弱による雄大さと音色の美しさが純粋に楽しめます。



下の図は、5人の被験者(A.B.C.D.E)に、1回30分間ヘッドホンで音楽を聴いてもらったうえで行った測定結果をグラフにしたものです。いずれも使用曲は、モーツァルト「ディヴェルティメント 変ロ長調K.137 第2楽章」「セレナード二長調 K.203 第2楽章」「ピアノ協奏曲第6番変ロ長調 K.237 第3楽章」。 
音楽療法の体温に及ぼす影響
ストレスホルモンである唾液コルチゾールの変化を測定した結果。音楽を聴いた後にはストレスホルモンである唾液コルチゾールの分泌が抑えられていることがわかります。

音楽療法唾液量に及ぼす影響
唾液量(奥歯で5分間カット綿を噛んだときに分泌される量)を測定。唾液の分泌が増えるということはリラックスしている証拠です。

音楽療法のストレスホルモン(唾液コルチゾール)に及ぼす影響
手の甲の体温変化を測定したもの。体温上昇は血管が拡張して血流が良くなり、副交感神経にスイッチが入った状態といえます。(『21世紀の音楽療法を考える』より転載)



和合 治久(わごう はるひさ)
埼玉医科大学保健医療学部教授・学科長。国際統合医学会顧問、日本臨床音楽研究会理事。専門分野は比較免疫生物学、免疫音楽医療学などで、人間と動物の免疫と健康維持の関係を解析している。共著に『21世紀の音楽療法を考える』(くおん出版刊)など多数。

※掲載内容は『TOUCHが考えるちょっと知的なバスタイム』発行当時(2011年)のまま掲載しております。



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